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ゆめのさつじん
夢の殺人
浜尾 四郎
「新青年」1929(昭和4)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,670 字 · 26 页
夜半に水道を烈しくだす音が余り長くやまなかったので主人が出て来て見ると、要之助が足を洗っているまねをしていた。烈しく殴って眼をさまさせた所、彼はまったくねぼけて水を出していたのだった。
藤次郎は其の有様を見ていた。そして主人と一緒になって彼を殴ったのだった。
藤次郎はその時のことを床の中で思いだしたのである。然し、次の瞬間に又誰かが上から降りて来る足音を聞いた。その足音は厠の辺で止り、ガタンと厠の戸をあける音が耳に入ッた時、藤次郎は急に妙なことを想像した。
再び戸が開く音がしてそのまま二階に戻るかと思っていると、それがずっと藤次郎のねている部屋の前まで来た。そうして暫く静かになった。外の人は中の様子を窺っているようだった。
藤次郎はちらりと要之助の方を見た。要之助は彼に背中を向けているが眠っているらしい。すると突然障子の外から、
「要ちゃん、要ちゃん」
とささやくような声が聞えた。藤次郎ははっと思った。それは美代子の声だった。
然し要之助は身動きもしない。
すると外で、
「要ちゃんてば……もうねちゃったの」
という声がきこえたかと思うと、そこを離れる気色がして足音はすうっとそのまま、二階に上ってしまった。