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ゆめはよびかわす
夢は呼び交す
蒲原 有明
――黙子覚書――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,126 字 · 210 页
それを我人ともに、大夫は奥の楽屋に隠れてでもいるかのように思っていた。その楽屋は奥の奥で人を寄せつけない。鴎外は遂にその本領を示したことがないといって攻撃していたものである。
鴎外の読者は、右の座に就くものと左の座に就くものとがはっきりと分けられている。誰がそう分けたのでもないのに、そうなっている。右の座からは讃歎の辞が送られる。左の座からは罵詈の声が起る。いずれも極端で最大級の形容詞が使われる。誇張であって、ぎごちない。この読者というものの中には批評家が勿論交っている。左の座にはその音頭取があるようにも見えた。大抵の読者はそのいずれかに属しながら押黙っていたのである。鴎外はむしろそれを好いことにして、いよいよ韜晦の術をめぐらすのである。少し言い過ぎであろうが、人々は手もなく鴎外に操られて、そうとも気がつかずにいたのである。
ここらで鴎外に対する在来の見方は綺麗に方をつけて、これを変改するより外はない。それには唯一の方法しか剰されていない。即ち思い切って、鴎外をしたたかな魂を持ったあそびの発明家として推すことである。これは一流の大家でなくては出来ない仕事である。