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ゆめはよびかわす
夢は呼び交す
蒲原 有明
――黙子覚書――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,126 字 · 210 页
でひさきと和訓が施されるまでにやっとなっていたものに違いない。『万葉』のひさきが今日のきささげならば、楸はその当時あかめがしわではなかったはずである。
さてこのひさきは奈良の都の佐保川の畔などに、川風に吹かれて生長していたようである。渡来した理由はやはり薬種に関係があったからであろう。その実はささげ豆のような形で、房になって枝ごとに垂れ下る。一本の木からかなり多量に取れる。そんなわけからきささげの名称が起り、それが後世では広く行われた。夏の土用のころ、莢のまだ青いうちに採って蔭干にして置く。利尿剤として薬種屋でも取扱い、今でもなお民間で使っているのがそれである。
鶴見はここまで考えつづけているうちに、心に一つの顔を思い浮べていた。記憶の鏡にぼんやり映っているのである。よくよく見れば、それは鶴見自身の困ったような顔である。
「あれには本当に困ったなあ。ほら、あの日除にもなるといって、青桐代りにうえさせたきささげだよ。土用時分になると、毎年忘れずに、向いの家からその実を貰いに来たものだ。老人がいて、寝たり起きたりしている。薬にするからだといってたね。」