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「おとなのぶんがく」ろんのげんじつせい

「大人の文学」論の現実性

宮本 百合子

「報知新聞」1937(昭和12)年2月16~18日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,408 字 · 9 页

青空文庫

というのは、官吏、軍人、実業家といっても、ただの小役人や何かではない。おびただしいそういう連中の形作る底のひろい三角形の頂点の部分、「情熱と信念」とをもって今日動いている一部の指導的な連中と、大衆を指導すべき真面目な一部の文学者である自分たちとが結合すべしというのである。

こういう「大人」がこの社会について考えるその考えと観察とで、作家は大衆的に書け、といわれているのであるが、この場合大衆は、そういう一群の「大人」な官吏、軍人、実業家達及び彼等と膝を交えて大人並に腹のある遊興も出来る一群の作家に指導される文化水準の低い、何故浪花節が悪趣味なのかも分らない、偉い官吏、軍人、実業家ではない人間の大群として考えられているのである。

作家は大衆の心を語るひと、大衆の生活の喜びと悲しみと希望とを謳ってくれる人として、作家は知識人のうちでもある特殊な地位を与えられていたはずであった。大臣の名は知らない人でも、蘆花や漱石の名を知っていたわけはここにあった。

この四五年の急に動く世相は、大多数の人々の日常生活を脅かして、経済的な不安とともに文化的な面で貧しくさせて来ている。