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「おとなのぶんがく」ろんのげんじつせい
「大人の文学」論の現実性
宮本 百合子
「報知新聞」1937(昭和12)年2月16~18日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,408 字 · 9 页
そのことは純文学の単行本の売れゆきのわるさ、その対策の推移を見てもはっきりしていると思う。小説の単行本が売れないといわれて来てから、出版屋は一昨年あたり、いわゆる豪華版というものの濫発をやった。高くて綺麗な本でなけりゃこの頃は売れません。つまり、本の内容からは何も大して期待しない、金のある人だけがこの頃は本を買い、自分たちの日常の不安からもこの世の中のことが本当に知りたいような人々はその逆に金がないという有様になって来た。物価があがる。雑誌を買っていた金は、高くなった洋服の月賦にまわさねばならない。小説を買って、カフェーのマダムをめぐる四人の男の情痴の世界を読むよりは、今日「大衆」の真面目な「大人」の心配は、子供をどうして育てるかにかかっているであろう。
文部省の教育方針が本当にかわれば、中学へ息子をやるにさえ、家庭の資産状態が調べられなければならない。数年前デパートの女店員は家庭を助けたが、今は家庭が中流で両親そろい月給で生計を助ける必要のないものというのが採用試験の条件である。「大人」に憂いが深いばかりか大人になりつつある若い男女の心も、訴えに満ちている。