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たいしかんのしまつきかん

大使館の始末機関

海野 十三

――金博士シリーズ・7――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,934 字 · 20 页

青空文庫

いや、老師のおかげです」

食卓に向い合って、金博士が、王水険老師を恭々しく拝しながらいった。それは老師にとって、いささか皮肉にも響く言葉であった。

「いや、お互いの年齢となっては、疲れを除くには睡眠にかぎるようじゃ。すなわち、いよいよ年齢をとれば、大量の睡眠が必要となり、すなわち永遠の眠りにつくというわけじゃ」

「御教訓、ありがたいことでございます」

老師は照れかくしに、つまらん講義を始める。

「ところで、この酒を一杯献じよう。これはこの地方で申す火酒の一種であって、特別醸造になるもの、すこぶる美味じゃ。飲むときは、銀製の深い盃で呑めといわれている。ではなみなみとついで、乾盃といこう」

二つの銀の盃に、その火酒はなみなみとつがれた。盃の縁は、りーんといい音をたてて鳴った。

「チェリオ!」

「はあ、ペスト!」

金博士は、変な言葉でうけて、盃の酒を、一息に口の中に流しこんだ。

老師も盃を傾けて口の傍に持っていった。しかし師は酒を呑んだわけではない。老師の拇指が、その盃についている突起をちょいと押した。すると、盃の底に穴があいて、酒はこの穴を通して盃の台の中にちょろちょろと流れ込んでしまった。