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だいぼさつとうげ

大菩薩峠4

中里 介山

中里介山『大菩薩峠4』。同一底本的分册已合并为一书。收入:大菩薩峠、大菩薩峠、大菩薩峠。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 264,133 字 · 524 页

青空文庫

存外、物優しい声でありました。

「わたくしも通りかかりの……」

お銀様は辛うじてこう言いました。

「この場の有様は、こりゃ………」

武士もまた、さすがにこの場の無惨な有様に、悸として突立ったきりでありました。

「そこに誰か斬られているのでござりまする、そうしてこの子供がここに投げ出されておりました」

「また殺られたか」

「どう致しましょう」

この時、武士はさのみ狼狽しないで、

「もしや、そなたは有野村の藤原家の御息女ではござらぬか」

と聞かれてお銀様は狼狽しました。

「左様におっしゃる、あなた様は?」

「拙者は神尾主膳でござる」

「神尾主膳様?」

「伊太夫殿の御息女に違いないか」

「はい」

お銀様は神尾主膳の名を聞いて一時に恥かしくなりました。主膳はお銀様の父の許を訪ねたこともあって、お銀様もその面影を知らないではありません。その人にここで会おうとは思いませんでした。会ってみれば、お銀様としても、さすがに恥かしい思いがしなければならないはずです。

「お銀どの……どうしてまたこの夜更けに、こんなところにお一人で……いや、それを承っていることも面倒じゃ、これはこのごろ流行りものの辻斬、拙者も今宵は忍びの道、かかわり合ってはおられぬ、この場はこのままにして立退き申そう、そなた様はいずれへお越しじゃ」