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だいぼさつとうげ
大菩薩峠4
中里 介山
中里介山『大菩薩峠4』。同一底本的分册已合并为一书。收入:大菩薩峠、大菩薩峠、大菩薩峠。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 264,133 字 · 524 页
「なぜ斬った、どこで……」
それから、やや暫らく古屋敷の中は寂然としていましたが、
「はははは、拙者にその駒井能登守とやらを討てと言われるのか」
机竜之助のこう言った声が、低いけれども座敷の隅に透りました。
「叱ッ、静かに」
それは神尾主膳が怖れるように抑えたのであります。
それから小さい声で話が続きました。時々は声が高くなったけれどよくは聞き取れません。暫らくして神尾主膳の、
「や、幸内がいない。幸内が逃げた」
と叫ぶ声が聞えました。
幸内を逃がしたのは自分が逃がしたのである。主膳は今までの自分のしたことに気がつかないでいたと見えます。
それから急に騒ぎ立って雨戸をあけて見たり、庭へ出て見たりするようでありましたけれども、結局、逃げた幸内の行方がわからない。そうなると神尾主膳はじっとしていられないほど、狼狽をはじめましたようであります。
主膳は周章しく帰りました。主膳が帰ってのあとは竜之助が一人でありました。
「神尾主膳はおれに向って、駒井能登守とやらを討ってくれという、神尾の頼みを聞いてやらにゃならぬ義理もなければ、駒井能登守を討たにゃならぬ怨みもない、おれは人を斬りたいから斬るのだ、人を斬らねばおれは生きていられないのだ――百人まではきっと斬る、百人斬った上は、また百人斬る、おれは強い人を斬ってみたいのじゃ