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だいぼさつとうげ

大菩薩峠5

中里 介山

中里介山『大菩薩峠5』。同一底本的分册已合并为一书。收入:大菩薩峠、大菩薩峠、大菩薩峠。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 262,120 字 · 516 页

青空文庫

七

「それは一体、どういう罪なんでございましょう、あんまり不思議で堪りませんから、それをお聞かせ下さいませ」

「それはな……」

駒井甚三郎は、お角の疑いに何をか嗾られて沈黙しましたが、急に打解けて、

「隠すほどのこともあるまい、実はな、恥かしながら女だ、女で失策ったのだ」

「エ、まあ、女で……」

お角は眼をって呆れました。その眼のうちには、幾分かの嫉妬が交っているのを隠すことができません。御身分と言い、御器量と言い、そうしてまた、このお美しい殿様に思われた女、思われたのみならず、これほどのお方を失敗らせたほどの女、それは何者であろう。憎らしいほどの女である。その女の面を見てやりたい。お角は、そう思って呆れている時に、自分の背にしている裏の雨戸に、ドーンと物の突き当る音がしたので吃驚しました。

七

お角は吃驚しましたけれども、甚三郎は驚きません。

「何でございましょう、今の音は」

「左様……」

甚三郎は、なお暫く耳を澄ましてから、

「やっぱり、いたずら者だろう」

と言いました。

「え、いたずら者とおっしゃるのは?」

「向うの松原に、小さな稲荷の社がある、あれの主が三吉狐というて、つい、近頃までも、その三吉狐がこの界隈に出没して、人に戯れたそうじゃ。