轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あまくさのはる
天草の春
長谷 健
「九州路抄」日本交通公社、1948(昭和23)年9月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,293 字 · 15 页
問答は果てそうにない。運転手はその問答を乗せたまま走り出した。結果はわかつていた。女は完全に勝つたのである。心臓のつよい女だな、と、ささやく乗客の声も聞えぬものの如く、女はすでに乗込んでいる男から、うまくやつた、と、ほめられ、いかにも得意そうに、人込みの中におし分けてはいるのであつた。
やはり天草の女に違いなかつた。
バスは、主として海岸ぞいに走つた。道路の凸凹がはげしく、私はしばしば天井に頭をうちつけなければならなかつた。右手遙かな海上の白い波頭は、あきらかに時化ていることを説明しているもののように、歴然とバスの中からも受取れた。赤崎、下津江、大島子と、海岸ぞいに走るバスは、時に島の部落の中を過ぎる。赤い椿の、わら屋根の上におおいかぶさつた南国風景が、青い海を背景にして、きわめて印象的だ。時には、古がわらのひさしを、ところどころくれないに色どつているのを、一瞬バスの窓から垣間みることもある。
子供たちが、椿の花輪をうちふりながら、私たちを見送つてくれる。家の広場に落ちた紅椿の間のえさを、あさり歩くにわとりなど、一寸かめらにでも収めたい一こまであつた。