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たいへいようまじょう

太平洋魔城

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1939(昭和14)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,147 字 · 187 页

青空文庫

とふくみ笑をしたが、運転士の方へむきなおると、

「おい、まだ戦隊においつけないのか。なにをぐずぐずしている」

とどなった。

「は。閣下はまだ出発号令をおかけになりませんので……」

「ばか、ばか、ばか。貴様は何年運転士をつとめているのか。よし、こんどかえったら、銃殺だ」

「ええっ、閣下。それはあんまり……」

「やかましい。早く快速艇を走らせろ」

「へえい」

とたんに、ケレンコと太刀川は、いやというほど後頭を潜水兜のふちにぶっつけた。おどかされてふるえあがった運転士が、いきなりエンジンを全速力のところへもっていったからであった。

近づく大艦隊

「司令官。戦隊においつきました」

運転士が、よろこびの声をあげていった。

「だが、まだなにも見えんではないか。うそをつくと――」

と、ケレンコがいいかけると、

「正面、舳のわずか右上に、うす黒く、ぼんやりしたものがあるでしょう」

「あああれか。なるほど」

ケレンコの目に、やっとはいった。

それから彼が妙にだまったと思ったら、座席の下から、水中無電気の受話器をひっぱりだして、耳にあてていたのである。

それを見て、太刀川も、すぐ座席の下に手をのばして、受話器をとり、人工鼓膜にあてた。