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たいへいようまじょう

太平洋魔城

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1939(昭和14)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,147 字 · 187 页

青空文庫

「しっかりしろ」

ケレンコが、しかるようにどなった。

だが、むりもない。快速艇は、空中にうかんだ風船のように上下左右へおどる。恐竜の猛攻撃による艦船爆破のひびきが、水中をかきみだし、このさわぎをひきおこしたのだった。

もしこのとき、空からこの海戦をながめたとしたら、この場の光景は、まるで血の池地獄、火焔地獄のように見えたにちがいない。

アメリカ巡洋艦十八隻のうち、その半分の九隻が、理由不明のままみるみるかたむいた。三重の艦底が、いつこわれたのか大穴があき、そこから海水がどんどんはいってきたのである。

同時に、防水扉ががらがらとおろされた。が、それもあまり役にたたなかった。というのは、せっかくおろした防水扉の表面から、どうしたわけか、ぶつぶつと、さかんに泡がたちはじめた。と見るうちに、そのまん中からだんだんとまっ赤に熱し、やがて、ぱっと大音響をあげて、ふきとび、そこに大穴があく。あとは砂糖がくずれるように、海水にくずれてしまう。どうしてよいか、まったく手のつけようがなかった。

運のわるい五隻の巡洋艦は、そのあとから、火薬庫の大爆発をひきおこし、まっ二つに、あるいは三つ四つにくだけて、上は空中にふきとび、のこりは波にのまれて、海底ふかく泡をたてながら、姿をけしてしまうのだった。