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たいへいようまじょう
太平洋魔城
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1939(昭和14)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,147 字 · 187 页
まったく不思議な鉄片であった。缶の中には、そのほかになんにも入っていない。
折りたたんだ紙片と、汚れた鉄片!
この二つが缶の中から出てきたのである。
「その紙片をひらいて、そこに書きつけてある文章を読んでみたまえ」
原大佐がいった。
「はあ、――」
太刀川は、紙片をひらいた。とたんに彼は口の中で、おもわず、あっと叫んだ。
太平洋の怪
太刀川青年は、紙片をひらいて、何におどろいたのであろうか。
それはほかでもない。その紙片が、たしかに人の血とおもわれるもので、汚れていることだった。血に染まった指の跡が、点々としてついている。そしてそこには鉛筆で、走書がしてある。その筆跡は、いかにもたどたどしい。たどたどしいというよりも、気がかーっとしていて、夢中に鉛筆を走らせたといった文字だ。それをひろって読んでみると、こんなおどろくべきことが書いてあった。
“――十二日アサ、海ノ色、白クニゴル。ソレカラ一時間ノチ、左舷前方ニトツゼン大海魔アラワレ、海中ヨリ径一メートルホドノ丸イ頭ヲモタゲ、ミルミル五十メートルホドモ頸ヲノバシタ。ランランタル目、ソノ長イ体ハ、波ノウエヲクネクネト四百メートルモ彎曲シ、アレヨアレヨトオドロクウチ、口ヨリ火ヲフキ、鉄丸ヲトバシ、ワガ船ハクダカレ、全員ハ傷ツキ七分デ沈没シタ。