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たいへいようまじょう

太平洋魔城

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1939(昭和14)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,147 字 · 187 页

青空文庫

それから、スピードをあげるんだ。いまは毎時二百キロしかでていないようだが、それを三百五十キロにあげろ」

ケレンコは、どうするつもりか、途方もないことをいい出した。

「え、三百五十キロ? この暴風雨の中に、三百五十キロ出せとおっしゃるのですか。そ、そんなことはできません。そんなことをすると、飛行艇のスピードと暴風の力とがかみあって、艇がこわれてしまいます」

スミス操縦長は、きっぱりとケレンコの命令をことわった。

「なに、できないって」

ケレンコの眼が、ぎらぎら光った。

「よし、できないというのなら、貴様に用はない。覚悟しろ」

パーン!

「あ!」

スミス操縦長の頬をかすめて、銃弾はとんだ。その銃弾は銀色をした壁をうちぬき、艇外にとび出した。とたんに、その穴から、しゅうしゅうと、はげしい風がながれこんできた。

スミス操縦長の頬からは、鮮血がぽたぽたとながれおちる。かれは決心したもののごとく、また計器をにらみながら一心に操縦桿をひく。彼もアメリカ魂をもつ勇士の一人だったのである。

「もう一度いう。針路を北へもう二十度。そしてスピードを三百五十に!」

ケレンコは、スミス操縦長に噛みつきそうな形相でさけんだ。