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たいへいようまじょう

太平洋魔城

海野 十三

「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1939(昭和14)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 93,147 字 · 187 页

青空文庫

「え、どうしてそんなことが――」

「いま窓から外を見たんです。方向舵がぴーんと曲ってしまって、今にも風にさらわれてゆきそうですよ」

太刀川時夫は、平気な口調でいった。

「あ、ほんとうだ。方向計の針が、ぐるぐるまわっています。これはたいへんだ」

「このままでは、本艇はおそろしい暴風雨の真中に吸いこまれてしまいますよ。まずスピードを下げて、風にさからわないように飛ぶことです。さっきからの操縦は、ありゃ無茶ですよ。飛行艇がこわれてしまう」

そういっているとき、どうしたわけか、操縦室の電灯が一時にぱっと消えてしまった。外は、夜のように暗い黒雲の渦だ。室内はくらくなった。ただその中に、蛍光色の計器の表だけがぴかりぴかりと光る。

「あ、たいへんなときに停電だ」

「こら、誰もうごくな。うごくとうつぞ」

委員長ケレンコも、あわて気味に一同をおどかした。

「電灯をつけなきゃいかんですが、困りましたね」

太刀川青年の、おちつきはらったこえが、くらがりの中からした。

そのさわぎのうちに入口から、小さい猿のような動物が、するすると室内に入ってきたのに、気づいた者はほとんどなかったようである。