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きかいなさいかい

奇怪な再会

芥川 竜之介

「大阪毎日新聞夕刊」1921(大正10)年1、2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,996 字 · 43 页

青空文庫

」

牧野の言葉には思いのほか、真面目そうな調子も交っていた。

「そうしたら、その時の事ですわ。」

「へええ、ひどくまた度胸が好いな。」

「度胸が好い訳じゃないんです。私の国の人間は、――」

お蓮は考え深そうに、長火鉢の炭火へ眼を落した。

「私の国の人間は、みんな諦めが好いんです。」

「じゃお前は焼かないと云う訳か?」

牧野の眼にはちょいとの間、狡猾そうな表情が浮んだ。

「おれの国の人間は、みんな焼くよ。就中おれなんぞは、――」

そこへ婆さんが勝手から、あつらえ物の蒲焼を運んで来た。

その晩牧野は久しぶりに、妾宅へ泊って行く事になった。

雨は彼等が床へはいってから、霙の音に変り出した。お蓮は牧野が寝入った後、何故かいつまでも眠られなかった。彼女の冴えた眼の底には、見た事のない牧野の妻が、いろいろな姿を浮べたりした。が、彼女は同情は勿論、憎悪も嫉妬も感じなかった。ただその想像に伴うのは、多少の好奇心ばかりだった。どう云う夫婦喧嘩をするのかしら。――お蓮は戸の外の藪や林が、霙にざわめくのを気にしながら、真面目にそんな事も考えて見た。

それでも二時を聞いてしまうと、ようやく眠気がきざして来た。