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きだんクラブ〔せんごばん〕

奇談クラブ〔戦後版〕

野村 胡堂

05 代作恋文

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,830 字 · 24 页

青空文庫

「また参りました」

「え、幾度でも」

そんな他愛もないことをいって、二人は貧しい卓を挟んで腰をおろしておりました。

「またお願いに参りましたが」

幽里子はさすがに恥かしそうですが、その恥かしさをなだめるように、

「喜んでお役に立ちましょう――この間のお手紙、反響がありましたか」

「ええ」

幽里子は艶爾として、自分の胸を抱くのです。其処に秘めてあるという意味でしょう。可愛らしい真珠色の指に透いて、乳のふくらみが、ほのかに青磁色の上着を匂わせます。

「今度はどんな事を書きましょう?」

東野南次は万年筆を執りました。

「改めて書くことは無いんですけれど――もう一度近いうちにお逢いしたいということと、私の家へお迎え出来たら、どんなに仕合せだろうということと――それから、それから――」

「それから?」

「――毎日お目にかかっていたいということと」

幽里子の唇は激情にふるえるのです。恋する処女心に、何んの用事も理由もあるものでしょう。

「宜しい、適当に書いて見ましょう。新聞でも御覧になって、暫くお待ち下さい」

東野南次はそう言って、憑かれた者のように筆を走らせました。素晴らしいインスピレーションです。