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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
05 代作恋文
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,830 字 · 24 页
先ず初夏の風物から書き起して、つつましい恋心を托した、詩のような文章が実に五枚、
「これで何うでしょう」
差出したのを読んでいく幽里子は、本当に泣いておりました。
「まア、結構ですわ。勿体ないほどで」
「飛んでも無い、あなたのお役に立てば幸せですよ」
「有難う御座います。では、少しばかりできまりが悪いのですけれども」
幽里子は又百円札を一枚、卓の上に押しやって、留める間もなくサッと部屋の外へ出てしまいました。
後に取残された東野南次の興奮と失望と、幸福と不幸とをごっちゃ交ぜにした心持は、今度は四日しか続きませんでした。
五日目にはまた幽里子の訪問を受けて、三本目の手紙を書いたのです。
それから三日目には四本目、次の二日目には五本目、――その度毎に幽里子の注文は熱烈になり、東野南次の筆も脂が乗ってきました。
六本目あたりからはもう、幽里子も遠慮の無い調子で、処女の嗜みを失わない程度の注文をつけ、東野南次もまた、自分の恋文でも書くような調子で、精一杯のものを書いていたのです。
十本目の手紙を書いた日、さすがの東野南次も、幽里子の後をつけて見ようかという気になりました。