轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ちぎりきぬ
契りきぬ
山本 周五郎
「ロマンス」ロマンス社、1949(昭和24)年10月~11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 32,757 字 · 66 页
季節はとうに秋になっていたが、その日は初めて秋らしい静かな雨が降っていた。
午後になると衣巻たち五人が訪ねて来、すぐに小酒宴が始まった。河野又三郎は、『鼻たか』というあだ名があり、それはじっさいにも鼻が高いけれど、それよりも多芸多能で、碁将棋とか謡とか魚釣りとか歌や俳諧などにまで手を出し、それをみないちおう素人ばなれのするくらいこなすので、御当人はいつも鼻たかだかだ、と、いう意味のほうがつよいらしい。――酔ってくるとその自慢ばなしで、巧みに話題をさらうのであるが、邪気がないのと話が面白いのとで、みんなは却っていいさかなにしているようにみえた。
けれどもその日は鼻たかさんはいつものようではなかった。河野ばかりではなく、ほかの人たちも常とは違って、なごやかにおちついて話すというぐあいだった。おなつに対してもいつもほど狎れたふうは見せず、衣巻などでさえ妙に隔てのある口をきいた。
――この方たちとももうお別れなんだ。
おなつはこう思って、なつかしいような名残り惜しいような気で、できるだけ膳の上を豊かにし、こまめに酌をしてまわった。
「さあ、そろそろ席を替えるかな」