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じょせい

女婿

佐々木 邦

「主婦之友」1925(大正14)年9月~11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,954 字 · 43 页

青空文庫

と又清之介君を顧みて破顔一笑した。

診察の結果は申すまでもなく流行の世界風邪と決定した。こゝ両三日が最も大切で肺炎に変じないとも限らないとあった。医者は手当の方法を詳しく言い含め、尚お看護婦の周旋を引き受けて立ち去った。後には清之介君、もう羽織袴どころではなかった。女中を氷屋へ走らせる。追っかけて婆やに氷嚢を買いにやる。その間に自ら瓦斯にかゝって湯湯婆のお湯を沸す。嫁を貰うとばかり思い込んでいて、看病の支度はしてある筈がないから、実際慌てたのである。

「あなた、私癒りましょうかね?」

と妙子さんは心細そうに尋ねた。

「大丈夫でございますよ。未だ肺炎と定まった次第ではありませんから、御心配なすっちゃいけません」

と清之介君は力をつけた。

「母は未だでしょうか?」

「もうソロ/\お帰りでございましょう」

「真正に御迷惑をかけて申訳ありませんわね」

「いや、何う致しまして」

清之介君の迷惑は啻に花嫁の介抱丈けに止まらなかった。妙子さんが三日目に医者の懸念通り肺炎と変症した頃から、清之介君も咳をし始めて、晩に一寝入りすると熱が出た。そうして翌日は流感、その翌々日は肺炎と事が捗った。