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じょせい
女婿
佐々木 邦
「主婦之友」1925(大正14)年9月~11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,954 字 · 43 页
見す見す妙子さんのお土産を背負ったことは分っていても、
「お蔭さまで命拾いを致しました」
と支配人夫婦にお礼を言わなければならなかった。好い面の皮だけれど、両親に於ても然う確信しているから仕方がない。妙子さんのが伝ったとは決して仰有らない。唯清之介さんが流感に罹った、と全く別口に扱っている。母親は殊に身贔屓が強く、
「娘は確かに音楽会から背負って参ったのでございますよ。一人で沢山なところへ婿まで罹りましてね。而もこの方が余程念入りでございました。あれは潜伏期の長いほど性質が悪いと申します。娘のと違って直ぐ呼吸困難に陥りますから、一週間というもの私が附きゝりでございました。まあ、酸素吸入で命を買ったようなものでございます。でも式が済んでからで宜うございましたよ。他人では迚もあれ丈け立ち入った看病は出来ませんからね」
と言っている。肚の中では清之介君のが妙子さんに伝ったと思っているのかも知れない。兎に角里は嫁の親であると同時に婿の命の親になってしまった。新婚早々これ丈けの恩顧を蒙ったのだから、唯さえ下り勝ちの頭が全く上らなくなったのも無理はない。
清之介君は一ツ橋出身である。