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じょせい
女婿
佐々木 邦
「主婦之友」1925(大正14)年9月~11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,954 字 · 43 页
「は、承知致しました」
と応じた。女中もいるし、里から婆やも手伝いに来ているのだから、それに命じて煙草でも喫っていれば宜いのに、自らお湯を汲んで来て、
「お熱うございますよ。検温器はこゝに置きます」
「来い/\早々御面倒をかけますわね」
と妙子さんは病苦の中にも態※(二の字点、1-2-22)粗雑な言葉を吟味して女房振りを見せているのに、
「いゝえ、何う致しまして」
と清之介君は何処までも女房を令嬢扱いにしている。後日悉皆細君の下敷になってしまったのも全く道理のないことでない。
妙子さんはもう嚔は止まったが、頻りに咳をした。時計を見つめていた清之介君が、
「もう宜しゅうございましょう」
と言っても聞えないくらいだった。拠なく、
「失礼でございますが、一寸……」
と断って、妙子さんの腋の下から検温器を引き出さなければならなかった。
「大変でございますよ。三十九度七分!」
「流感でしょうね?」
と微かに呟いて、妙子さんは目を閉じた。長い睫毛に涙が露と宿っていた。
「さあ、何うでございましょうか知ら? お胸がお痛みでございましょうか?」
と訊いても返辞がなかった。唯息使いだけが小刻みに荒く聞える。