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こうじんぶつ

好人物

佐々木 邦

「婦人画報」1925(大正14)年5月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 52,609 字 · 107 页

青空文庫

僕はその積りでこの通り片寄せて建てゝある」

と木下君も相応考えている。尤も郊外に家や地面を持つ手合は大抵何か魂胆がある。全く無代償で不便な生活に甘んじる風流人は滅多になかろう。

食事が済んでから千吉君は馬に乗って見た。木下君は念の為め轡を取って歩きながら、

「これは真物だ」

と褒めた。

「少し走って見ようか?」

と千吉君は得意になった。木下君は矢張り轡を取って駈け出した。

「もう少し真直ぐになって」

「斯うかい?」

と千吉君は反り身になった。

「然う/\。これはナカ/\筋が好い」

と木下君は益※(二の字点、1-2-22)煽てた。

それから三人がかりで彼方此方の貸地を見て歩いた。皆同じ平面の大根畑で何れも坪当り十銭だから、好いも悪いもない。結局大場君からも木下君からも一町ばかりの二百坪が候補地と定った。千吉君は次の日曜を約して帰った。

「お早うございましたわね」

と安子夫人はイソ/\として迎えた。他の道楽では主人が予測より早く帰って来た例がない。

「直ぐ御飯にしておくれ。腹がへったの何のって。成程、郊外生活は胃弱の薬になる」

と千吉君はガツ/\している。

「まあ、大袈裟ね。