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こうじんぶつ

好人物

佐々木 邦

「婦人画報」1925(大正14)年5月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 52,609 字 · 107 页

青空文庫

大場君は地価も場合によっては下るものだと初めて承知した時、少々胆力が揺ぎ始めた。これは借家をして遠い先の値売りを待っているよりも唯今半分手放して直ぐに住宅の新築に着手する方が算盤だと思いついた。そこで五十円になるまで草を生やして置く筈の土地を三十円で二百坪売り飛ばしてしまった。

「二百坪で六千円さ。六千円では少し足りないから、もう百坪処分すると九千円になるが、それでは此方の地面が狭くなる。一万二千円あれば理想的な文化住宅が出来るけれど、地面がなくなってしまう。斯うと知ったら借金を質に入れても千坪たんまり買って置くのだったのに、下司の智恵は後からで、今更何とも仕方がない」

と言った。

「けれども真正に結構な御道楽でございますわ」

と安子夫人は羨望の溜息を吐いた。千吉君が碁や絵をやる間に大根畑を買って置けば家が建っていると思ったのである。

「僕も始めるかな」

と千吉君が同感の意を表した時、

「お始めなさいませよ。オホヽヽヽ」

と安子夫人は結婚後初めて良人の道楽を機嫌よく裁可した。

「早速見聞に出掛けよう」

「お出掛けなさいましとも」

「奥さんも御貯金をお投じになっては如何ですか? 昨今二十八円の売物が出ていますよ。