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こうじんぶつ
好人物
佐々木 邦
「婦人画報」1925(大正14)年5月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 52,609 字 · 107 页
先刻道傍にあった肥溜めなんかは原始的家屋の標本さ。要するに屋根ばかりだったろう? 田舎の百姓家はあれが発達したものだから、皆屋根が馬鹿大い。お寺だって然うだろう? 旧式の建築物は皆屋根が勝っている。頭でっかち尻つぼまりで、安定釣合という奴が欠けているから落ちつきがないよ」
「君は専門家だね」
「然うでもないが、家を建てるについて多少研究したのさ。文化が進むにつれて屋根の小さくなることは建築学が証明している。最近の鉄筋コンクリート建築は殆んど屋根がない。丸ビルを見ても分るだろう」
「成程ね」
「屋根を死物にして置くのは損だよ。東京市も屋根を活用すれば面積が倍になる勘定さ。その辺を考えて、僕の家は屋根を屋上庭園や物乾場にしてある」
と大場君が効能を述べている中にその最新式の建物に辿り着いた。
大工が数名仕事をしていた。もう殆んど出来上っている。千吉君は大場君に案内されて先ず屋上庭園から周囲の風光を賞した。杉林を背景に文化住宅が思い/\の形状と色彩を競っている様は確かに新味がある。
「実際好い眺望だね」
と千吉君は先刻からの感服を続けた。
「これが何よりの御馳走さ」