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ようふんろく
妖氛録
「中島敦全集 第四巻」文治堂書店、1959(昭和34)年6月刊
N1 · 挑战 · 新字新假名 · 5,005 字 · 11 页
事の真偽に些か疑を抱いた荘王は、巫臣を召して、その意見を徴した。
「本当らしく思われます。」と巫臣は答えた。
「晋では、※の戦で我の得た捕虜の中に、智というものがおります。晋では此の者を取戻したいのです。智※(「螢」の「虫」に代えて「缶」、第4水準2-84-69)の父は晋侯の寵臣であり、且つ其の一家は鄭国に知己を多く有っているので、此の際鄭を仲介として、我が国と捕虜交換をしようというのでしょう。それで、彼に囚われている我が公子穀臣と、襄老の尸とを返そうというのだと思われます。」
王は頷いて、夏姫を鄭に帰した。夏姫には固より、巫臣の意は疾くに通じられている。出発に臨んで「夫の尸が得られなければ、二度と戻りませぬ」と傍の者に言った。「夫の尸は得られそうもありませぬ故、私は再び戻りますまい」という意味に取った者は誰一人無い。黒ずくめの喪服に日頃の凄艶さを包んだ夏姫の旅姿には、流石に亡夫の尸を取りに行く未亡人らしい殊勝さが見える。黒要とは、極めてあっけなく別れた。夏姫が鄭に着くと、それを追いかけるようにして巫臣の密使が鄭に行き、夏姫を聘し度い旨を伝えた。鄭の襄公は之を許した。