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ふじんとぶんがく

婦人と文学

宮本 百合子

※「作品について」参照

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,792 字 · 351 页

青空文庫

「大きくなったら、またおいで」と片言で云われた。次にやられたのは或る料亭の奥の小間使いであった。そこをやめてから祖母と病身な叔母との暮しで「いっそお半玉になってしまおうと思う」と決心するほど窮迫した。やがて父の許で、自身野ばなしにされたように暮したが、十七で再び東京に現れて彼女は以前小間使として働いた料亭の女中になった。それから、ある輸入商兼書店につとめ、その三年間の生活は、彼女にすきな文学書をよませ、音楽会へ行かせもしたが、彼女をその単調な反覆で絶望させ、自殺したい思いをさせた。中流的な結婚をした。それは、その厭世的な女店員生活からの脱出であったが、変質的な良人との間が苦しくて、一人の女の児をもって離婚した。遊んでいることの出来ない児もちの若い母は、レストランに通いはじめた。「艷々と髪に波をうたせ、水色に紫に錦紗の袖をひるがえし、オーケストラの間をおよぎまわる金魚であり、花である彼女らの一人であった。」

その生活を一年余りつづけたとき、窪川稲子は、雑誌『驢馬』の同人たちと知り合った。中野重治、堀辰雄、西沢隆二、宮木喜久雄、窪川鶴次郎などが同人として、室生犀星、芥川龍之介、萩原朔太郎などの名もつらねられていた。