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こどもはばかでなかった
子供はばかでなかった
小川 未明
「国民新聞」1931(昭和6)年3月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,227 字 · 5 页
やはり、二、三日は、お母さんは、子供のことを案じて、仕事が手につきませんでした。
「つらくても、我慢をしているのでないかしらん? あんなことをいうのではなかった……。」と、思いわずらっていますと、
「僕、帰ってきた……。」と、入り口でした声は、たしかに、自分の子の声でありました。母親は、またかと驚いて、飛び出しました。
「どうしたんだ? 吉雄……。」と、お母さんは、思わず、我が子の顔をにらみました。
よくきくと、時計屋のおばあさんは、病気で臥ているのでした。吉雄は、その看病のてつだいをさせられるのがいやさに、出てきたというのであります。
「もう、お年よりで臥ていられるのだから、そんなこと、なんでもないじゃないか。」と、お母さんは、ひたすら、吉雄が、勤めのいやさから出てきたと信じて、しかりました。
「僕は、たんつぼのそうじなんか、させられるのはいやだ!」と、吉雄が、いいますと、お父さんは、これを聞いて、
「子供に、そんなことをさせるのは、先方がよくない。いやがるのは、もっともだ。」と、こんどは、お父さんが、吉雄に味方されたのでした。
吉雄は、家に帰ると、いつも川のほとりにゆきました。