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あんごしんにほんふどき

安吾新日本風土記

坂口 安吾

03 第二回 富山の薬と越後の毒消し≪富山県・新潟県の巻≫

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,916 字 · 46 页

青空文庫

まず薬袋を預けて行く。翌年見廻りにきて、のんだ分の代金をうけとって行くという仕組みである。代金後払いというところが一般の行商と類を異にしているから、どこの家庭でも押売りとは区別して考える。一つは歴史のせいもあろう。夏の金魚売りなぞと同じように、なくてはならぬ土地の風物化している親しさもあって、関東の農村では村々の入口に「押売りの村内立入りお断り」という高札がかかげてあるが、富山の薬売りと越後の毒消し売りは特別だ。毒消し売りは現金引き換えであるが、これもその歴史と、売り子が女という点に親しみがあるのであろう。毒消し売りはちょッとした美人系で、その伝説によっても名物化しているようだ。

私は越後の生れだ。ふるさとは書きづらいもので、よく云うぶんにはキリがないし、欠点は知りすぎているから悪く云うぶんにもキリがない。過不足なく見たり書くにはヤッカイなシロモノだ。だからこの仕事では敬して遠ざけていたのであったが、富山の薬と思いついた瞬間に、ついでに越後の毒消しもやるとふるさとが好便に処置できるということに気がついた。

越後の女はよく働く、と云われている。しかし、よく働く女は越後女とは限らない。