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あんごしんにほんふどき

安吾新日本風土記

坂口 安吾

03 第二回 富山の薬と越後の毒消し≪富山県・新潟県の巻≫

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,916 字 · 46 页

青空文庫

落ちつき払った旦那の村

「せめて食うことだね」

私たちはどの宿でも日本海の鱈場ガニを注文した。また鱈の子の吸物に舌つづみを打った。冬の裏日本は美食にみたされている。今晩はあれが食いたい、これが食いたいと、せめて私の考えているのは食べ物のことばかりであった。

落ちつき払った旦那の村

毒消し部落についても私がきいた知識は暗いことばかりだ。新潟や巻できいたことばかりでなく、毒消し部落の村役場で村長さんから得た知識すら暗いことばかりなのである。

この角田村というのは全部が砂でできている。それも砂丘だ。海から一里余にわたって何段かの高い砂丘のヒダが角田村である。

しかし砂といえば、蒲原平野の大半がもともと砂でできたものなのだ。六百年前ほどの地図によると、いまの新潟市なぞは全然存在しておらぬのである。わずかに沼垂をのこして海は深く新津まで湾入している。それが六百年前だ。新津とあるから、新津も新出来の港で、もとの港はどこまで湾入していたか見当がつかない。この大きな湾が信濃川と阿賀之川の押しだす砂とまた海の押しもどす砂とで自然に埋めたてられたのが蒲原平野だ。角田村がその埋めたてられた西端に当っている。