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あんごしんにほんふどき
安吾新日本風土記
03 第二回 富山の薬と越後の毒消し≪富山県・新潟県の巻≫
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,916 字 · 46 页
私が富山へ行った日は、この地方でも珍しい荒れであった。吹雪のために汽車もおくれたほどだ。終戦後、日本海は荒れることが少くなったそうだが、この日は海が大荒れで、私たちは伏木港外の雨晴という海岸へ義経の古蹟を見に行くはずであったが、海岸の路上に波がうちあげるために一時は通行ができなかった。その荒波がしずまりかけて、どうやら通行できるようになったころの風景がグラビヤにのせた日本海の写真である。
伏木港外の日本海だ。伏木は裏日本では新潟をしのぐ良港である。しかし北鮮や樺太との航路を失った現在では全然開店休業の寂しさで、港には一隻の船の姿も見出すことができない。その寂しさは新潟の港も同じことである。北鮮と樺太の航路がなければ用のない港なのだ。一隻も船の姿がなく、クレーンは動かず、人影すらもない港の風景というものは、まことにやりきれない寂しさに充されているものだ。満目死の色である。戦前は軽く六尺は積った雪が戦後は一尺すらも積らなくなったというが、それに反比例して生気の失われた裏日本であった。
「この旅行は侘しすぎるね」
私たちの旅の足は重かった。こうして重い足をひきずりながら、予定にしたがって越後の毒消し部落へ向ったのだが、気持は滅入るばかりで、明るさを考えることができなくなっていた。