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あんごしんにほんふどき
安吾新日本風土記
03 第二回 富山の薬と越後の毒消し≪富山県・新潟県の巻≫
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,916 字 · 46 页
五六人役場の一室で集りを催していた。この連中が異様に珍しそうに窓から首をだして私たちの撮影するのを眺めたから、たまらない。娘は本当にキャッという叫びをあげて、首の附け根から真ッ赤になってフラフラしたのである。私は娘の心根がいじらしいと思った。彼女にとってはこの村の男だけが本当の男なのだろう。私はそれをしみじみ感じたのである。今どき温泉へ行けば男に肌を見せるのをなんとも思わぬ娘たちの姿はいつでも見出すことができるのである。そういう時世にこの娘の逆上的な羞恥は、いじらしくもあれば、また異様になまめかしいものでもあったのである。
しかしさすがに千軍万馬の行商に胆をきたえてもいるから、撮影が終ると、再びポッとあからみながらも、男たちが首をつきだしている窓の下へツと駈け寄って、
「ポマードいらんかね」
と云った。男たちはポカンとしているだけで、このユーモアに応じることができなかったが、それもここが地上の終点的な平和郷であってみれば仕方がない。男が社交界に出入して洒落やユーモアをもてあそぶのは戦国時代の風習である。絶対の平和国家ともなれば、文化も貴族精神も女だけのものである。