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あんごしんにほんふどき

安吾新日本風土記

坂口 安吾

02 第一回 高千穂に冬雨ふれり≪宮崎県の巻≫

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,371 字 · 34 页

青空文庫

高千穂神社の御神体は奈良朝以前の作とつたえられる素人の手づくりのような木彫で、女神の像は着物が左前であったり、ここには大陸から流れてきた流浪の遊芸人がかなり土着したのではないかと見られるフシがあるようだ。神楽と同じぐらい古いという熊襲踊りというのもある。

高千穂には穴居の土グモが住みついていたという。また熊襲は退治されるばかりで朝廷の味方になったという記事はないらしいが、大隅薩摩の隼人族は古い昔のころから朝廷に招かれて遊芸に奉仕しており、飛騨のタクミが大工の奉仕をするように遊芸を専門に招かれて演じていたのである。遊芸のダシモノが神話などにふれるのは当然であるから、大隅日向の遊芸人が天孫降臨の地を自分のふるさとの話として演じても不思議はない。天孫降臨の伝説が日向に結びついてしまったのは、案外こんなわけではないかと思うのである。

高千穂の人々はむしろ甚しく温和で素直で熊襲的な気風はないのである。熊襲的なところをあげれば三日三晩も夜神楽をぶッ通しで踊りぬく遊び好きなところと、色情に対して開放的な明るさであろう。神楽にも熊襲踊りにも交接を直接踊りにとりいれた痛快で陽気なものが少からぬ由で、見物衆が眠む気を催したり退屈を表しはじめるとちょいとその踊りを用い、また女子や子供にはそれをもって人生案内とし、彼らの人生が