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あんごしんにほんふどき

安吾新日本風土記

坂口 安吾

02 第一回 高千穂に冬雨ふれり≪宮崎県の巻≫

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,371 字 · 34 页

青空文庫

豊かであるように指導の役目を果しているのだそうだ。

「ヒエツキ唄」で有名な椎葉は高千穂から山越えして十八里の隣村であるが、ここは女の里として名高いところ。高千穂の若い衆は神楽など見せに行って椎葉の娘を見そめると、往復三十六里の山道を物ともせず夜道をいそいでランデブーに通うのは昔も今も変らぬ由。疲れるとその場にゴロ寝して休み、また道を急いで女のもとに通う。今も昔と変らずもっぱら山越えで、バスで通うような者はない。またバスではいったん海へでて別の谷川沿いにまた山中深くわけいるのだから歩く方が時間的にも早いぐらい。この土地の人々の生活は太古さながら、大自然さながらだ。椎葉では客人に娘を伽につけてもてなす風習が残っているのである。「ヒエツキ唄」は流行歌では哀調切々だが、実はアイビキの唄だ。男の合図がきこえるから馬に水をやるとごまかして男のところへ行きましょうという唄だ。土地の人々の唄い方では哀調よりも豪快なものの方が強くでている。高千穂にのこる「刈干切り唄」の方がむしろ哀調が高いが、これは唄い方がむずかしいからそのままでは流行歌になりそうもない。

往復三十六里の山道をアイビキに通う風習というものも日本ではスケールの大きいアイビキであろう。