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さむはし

寒橋

山本 周五郎

「キング」大日本雄辯會講談社、1950(昭和25)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,416 字 · 36 页

青空文庫

それは疑いもなく二人の仲を立証する言葉だった。

――本当だろうか、……いやそんな筈はない、あのひとがおたみにそんなことをする筈がない。

そう思えば思うほど、お孝にも幾つか疑わしい記憶がよみがえってきた。有明行燈の消えていた夜のこと、袖垣の蔭で良人と二人きりでおたみが泣いていたこと、それから良人が来てからのおたみのなまめいたようすや、じっと良人をみるしおのある眼つきなど。

そうしてとうとう耐えかねて、六日めの夜になって、お孝は良人にそのことをきいた。この瞬間に自分の生き死にがきまるという気持であった。

「本当のことを云って頂戴、あたしおちついて聞くから、……ねえ、決して騒いだりなんかしないから、本当のことを聞かして頂戴」

時三は黙って自分の膝を見ていた。こころもち額が白くなったようである、それからやや暫くして、呟くように云った。

「――済まない、勘弁して呉れ」

「いいわよ勘弁して呉れなんて、いいのよそんなこと」

お孝は慌てて笑いながら遮った。自分でもふしぎなくらい明るい笑いかたで、寧ろうきうきした調子でさえあった。

「本当のことがわかればいいの、それで、……おたみはいつごろお産するの」