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からすうりのはなとが

寺田寅彦随筆集 第三巻

寺田 寅彦

寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第三巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:からすうりの花と蛾、火山の名について、日常身辺の物理的諸問題、量的と質的と統計的と、物理学圏外の物理的現象、ロプ・ノールその他、青衣童女像、カメラをさげて、連句雑俎、ラジオ・モンタージュ、青磁のモンタージュ、読書の今昔、映画の世界像、「手首」の問題、映画雑感(Ⅰ)、生ける人形、映画芸術、音楽的映画としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」、俳諧の本質的概論、夏目漱石先生の追憶、田丸先生の追憶。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 213,804 字 · 425 页

青空文庫

一日氏の机上においてある紙片を見ると英語で座右の銘とでもいったような金言の類が数行書いてあった。その冒頭の一句が「少なく読み、多く考えよ」というのであった。他の文句は忘れてしまったが、その当時の自分の心境にこの文句だけが適応したと見えて今でもはっきり記憶に残っている。今から考えてみると日下部博士のようなオリジナルな頭脳をもった人には、多く読み少なく考えるという事はたといしようと思ってもできない相談であったかもしれない。書物を開いて、ものの半ページも読んで行くうちに、いろいろの疑問や思いつきが雲のごとくむらがりわき起こって、そのほうの始末に興味を吸収されてしまうような場合が多かったのではないかと想像される。

こういう種類の頭脳に対しては書籍は一種の点火器のような役目をつとめるだけの場合が多いようである。大きな炎をあげて燃え上がるべき燃料は始めから内在しているのである。これに反してたとえば昔の漢学の先生のうちのある型の人々の頭はいわば鉄筋コンクリートでできた明き倉庫のようなものであったかもしれない。そうしてその中に集積される材料にはことごとく防火剤が施されていたもののようである。