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あひるとさる
寺田寅彦随筆集 第五巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第五巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:あひると猿、疑問と空想、映画と生理、映画雑感(Ⅲ)、映画雑感(Ⅳ)、災難雑考、三斜晶系、糸車、詩と官能、自由画稿、小浅間、小爆発二件、地図をながめて、天災と国防、日本人の自然観、破片、俳句の型式とその進化、俳句の精神、物売りの声、B教授の死。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 194,515 字 · 389 页
このむすこのむすこがある年の正月に何かちょっとしたことがなるべきようになっていなかったと言ってひどくその母や女中に対しておこっているのをその父親が発見してひどくびっくりし、そうしてまた非常に恐ろしくなったのだそうである。
こういう話を聞いてひどく感心したことがある。つまらない笑い話のようで実はかなり深刻な人間心理の一面を暴露していると思う。こんなのも何かの小説の種にはならないものかと思う。
それはとにかく、正月をめでたいという意味が子供の時分から私にはよくわからなかったが、年を取ってもやはりまだ充分にはわからない。少なくも自分の場合では正月というととかくめでたからぬことが重畳して発生するように思われるのである。のみならず平日ならそれほどにも感じないような些細なめでたからぬことが、正月であるがために特にふめでたに感ぜられる。これはおそらくだれでも同様に感じることであろう。たとえば小さい子供がおおぜいあるような家ではちょうど大晦日や元日などによくだれかが風邪をひいて熱を出したりする。元旦だからというのでつい医者を呼ばなかったばかりに病気が悪化するといったような場合もありうるであろう。