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こざくらひめものがたり
小桜姫物語
浅野 和三郎
03 小桜姫物語
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 136,097 字 · 267 页
『ここは妖精の見物には誂向きの場所じゃ。大ていの種類が揃って居るであろう。よく気をつけて見るがよい。』
そう注意されている中に、もう私の眼には蝶々のような羽翼をつけた、大さはやっと二三寸から三四寸位の、可愛らしい小人の群がちらちら映って来たのでした。
『まあ何という不思議な世界があればあったものでございましょう!』と私はわれを忘れて、夢中になって叫びました。『お爺さま、彼所に見ゆる十五、六歳位の少女は何と品位の良い様子をして居ることでございましょう。衣裳も白、羽根も白、そして白い紐で額に鉢巻をして居ります……。あれは何の精でございますか?』
『あれは梅の精じゃ。若木の梅であるから、その精も矢張り少女の姿をして居る……。』
『木の精でも矢張り年齢をとりまするか?』
『年齢をとるのは妖精も人間も同一じゃ。老木の精は、形は小さくとも、矢張り老人の姿をして居る……。』
『そして矢張り男女の区別がありまするか?』
『無論男女の区別があって、夫婦生活を営むのじゃ……。』
そう言っている中に、件の梅の精は、しばらく私達の方を珍らしそうに眺めて居ましたが、こちらに害意がないと知って安心したものか、やがてスーッと、丁度蜻蛉のように、空を横切って、私の足元に飛び来り、その無邪気な、朗かな顔に笑みを湛えて、下から私を見上げるのでした。