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こざくらひめものがたり
小桜姫物語
浅野 和三郎
03 小桜姫物語
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 136,097 字 · 267 页
五十、銀杏の精
五十、銀杏の精
一と通り野原の妖精見物を済ませますと、指導役のお爺さんは、私に向って言われました。――
『この辺に見掛ける妖精達は概して皆年齢の若いものばかり、性質も無邪気で、一向多愛もないが、同じ妖精でも、五百年、千年と功労経たものになると、なかなか思慮分別もあり、うっかりするとヘタな人間は敵わぬことになる。例えばあの鎌倉八幡宮の社頭の大銀杏の精――あれなどはよほど老成なものじゃ……。』
『お爺さま、あの大銀杏ならば私も生前によく存じて居ります。何うぞこれからあそこへお連れ下さいませ……。一度その大銀杏の精と申すのに逢って置き度うございます。』
『承知致した。すぐ出掛けると致そう……。』
どこを何う通過したか、途中は少しも判りませぬが、私達は忽ちあの懐かしい鎌倉八幡宮の社前に着きました。巾の広い石段、丹塗の楼門、群がる鳩の群、それからあの大きな瘤だらけの銀杏の老木……チラとこちらから覗いた光景は、昔とさしたる相違もないように見受けられました。
私達は一応参拝を済ませてから、直ちに目的の銀杏の樹に近寄りますと、早くもそれと気づいたか、白茶色の衣裳をつけた一人の妖精が木蔭から歩み出で、私達に近づきました。