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こざくらひめものがたり
小桜姫物語
浅野 和三郎
03 小桜姫物語
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 136,097 字 · 267 页
それは場所の変更と申すよりは、むしろ境涯の変更、又は気分の変更と申すものかも知れませぬ。現にあの岩屋にしても、最初は何やら薄暗い陰鬱な処のように感ぜられましたが、それがいつとはなしにだんだん明るくなって、最後には全然普通の明るさ、些しも穴の内部という感じがしなくなり、それに連れて私自身の気持もずっと晴れやかになり、戸外へ出掛けて漫歩でもして見たいというような風になりました。たしかにこちらでは気分と境涯とがぴッたり一致しているもののように感ぜられます。
ある日私がいつになく統一の修行に倦きて、岩屋の入口まで何とはなしに歩み出た時のことでございました。ひょっくりそこへ現われたのが例の指導役のお爺さんでした。――
『そなたは戸外へ出たがっているようじゃナ。』
図星をさされて私は少しきまりが悪く感じました。
『お爺さま、何ういうものか今日は気が落付かないで困るのでございます……。私はどこかへ遊びに出掛けたくなりました。』
『遊びに出たい時には出ればよいのじゃ。俺がよい場所へ案内してあげる……。』
お爺さんまでが今日はいつもよりも晴々しい面持で誘って下さいますので、私も大へんうれしい気分になって、お爺さんの後について出掛けました。