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こいずみやくもひこうがほん「ようましわ」
小泉八雲秘稿画本「妖魔詩話」
寺田 寅彦
「帝国大学新聞」1934(昭和9)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,659 字 · 6 页
や「雪女」や「離魂病」の絵にはどこかに西欧の妖精らしい面影が髣髴と浮かんでいる。著者の小品集「怪談」の中にも出て来る「轆轤首」というものはよほど特別に八雲氏の幻想に訴えるものが多かったと見えて、この集中にも、それの素描の三つのヴェリエーションが載せられている。その一つは夫人、もう一つは当時の下婢の顔を写したものだそうである。前者の口からかたかなで「ケタケタ」という妖魔の笑い声が飛び出した形に書き添えてあるのが特別の興味を引く。
その他にもたとえば「雪女郎」の絵のあるページの片すみに「マツオオリヒシグ」としるしたり、また「平家蟹」の絵の横に「カゲノゴトクツキマタウ」と書いて、あとで「マタウ」のタを消してトに訂正してあったりするのをしみじみ見ていると、当時における八雲氏の家庭生活とか日常の心境とかいうものの一面がありありと想像されるような気がしてくるのである。おそらく夕飯後の静かな時間などに夫人を相手にいろいろのことを質問したりして、その覚え書きのようなつもりで紙片の端に書きとめたのではないかという想像が起こってくる。
「船幽霊」の歌の上に黒猫が描いてあったり、「離魂病」