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こいずみやくもひこうがほん「ようましわ」

小泉八雲秘稿画本「妖魔詩話」

寺田 寅彦

「帝国大学新聞」1934(昭和9)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,659 字 · 6 页

青空文庫

のところに奇妙な蛾の絵が添えてあったりするのもこの詩人の西欧的な空想と連想の動きの幅員をうかがわせるもののようである。

一雄氏の解説も職業文人くさくない一種の自由さがあってなかなかおもしろく読まれる。八雲氏令孫の筆を染めたという書名題字もきわめて有効に本書の異彩を添えるものである。

小泉八雲というきわめて独自な詩人と彼の愛したわが日本の国土とを結びつけた不可思議な連鎖のうちには、おそらくわれわれ日本人には容易に理解しにくいような、あるいは到底思いもつかないような、しかしこの人にとってはきわめて必然であったような特殊な観点から来る深い認識があったのではないかと想像される。それを追跡し分析し研究することはわれわれならびに未来の日本人にとってきわめて興味あり有意義であるのはもちろんであるが、そのような研究に意外な光明を投げるような発見の糸口があるいはかえってこうした草稿の断片の中に見いだされないとも限らないであろう。

たとえば「怪談」の中にも現われまたこの百物語の数々の化け物の中から特に選び出される光栄をもったような化け物どもが、どういう種類の化け物であって、そのいかなる点がこの人にアッピールしたか、またそれがどういう点で過去数千年の日本民族の精神生活と密接につながっているか。