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しょうせつのタネ
小説のタネ
吉川 英治
「文藝春秋」1957(昭和32)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,376 字 · 23 页
僕の空想癖でやれば……いや今は書きはしませんよ、もし書くとすればですね、悟空が自分の毛を抜いて、ふッと吹きさえすれば、変身の術を行うから、彼を用いて、一度は女体の子宮にも入れてみたいなんて思いますね、悟空という半人間の生命を一ぺん精子に戻して、そこから再出発させてみたい。まだ世に出ない子宮の中で、篤と、人間っていうものの出発を考え直さしてみたいような気がしますね。そして現行の政治方式というものやら何々主義などと絶対的に思われているものが、果してほんとに人間の社会の暮し方に好適なものか、どうかなんてことを、悟空に考えさせてみるわけです。
いや、そんなことを云っても、やっぱり書くのはむずかしいな。一朝一夕にはやれないな。空想ってやつは、孫悟空が何万里を一瞬に駈けるようなもんで、とめどもないが、われに返ッてみたら、如来の手のヒラを駈けていたに過ぎなかったっていうようなもんですな。……しかしこの夏は「西遊記」を手に悟空と共に宏大無辺を遊びましたよ。
「西遊記」には、後代に書かれた「後西遊記」もあるけれど、「後西遊記」はつまらない。「続金色夜叉」の類で、いけないですね。