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しょうじょじごく
少女地獄
夢野 久作
「少女地獄」黒白書房、1936(昭和11)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,174 字 · 206 页
況して最早、とっくの昔に大阪に着いているはずの私が、あんな事をしたとお気付になるはずはない。そうして折角三人も揃って思い立たれた今夜の計画を、これくらいの事にビックリしてお中止になるはずもない。ただアラビヤン・ナイトのような不思議な災難に驚かれて、ワヤワヤとお騒ぎになっただけで、そのまま先を急いでお出でになったであろう事を、私は九分九厘まで信じておりました。
ですから私は温泉ホテルの前をすこし行き過ぎた湯の川橋の袂で自動車を止めて貰いました。
それから狭い横露地伝いに私は、温泉ホテルの三階の横に出まして、あすこの暗い板塀の蔭で長いこと耳を澄ましておりますうちに、高い高い三階の窓から、明るい光線と一緒に微かに洩れて来る校長先生の笑い声を耳に致しました私は、ホット安堵の胸を撫でおろしました。それから直ぐに、音を立てないように板塀を乗り越して、非常梯子伝いに三階の非常口まで来ますと、あそこから丈夫な銅の雨樋伝いに、軒先からクルリと尻上りをして屋根の上に出ましたが、さすがの私……火星の女も、その尻上りをした時に、はるか眼の下の暗黒の底の、石燈籠に照された花崗岩の舗道をチラリと見下しました時には、思わず冷汗が流れました。