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しょうじょじごく

少女地獄

夢野 久作

「少女地獄」黒白書房、1936(昭和11)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,174 字 · 206 页

青空文庫

そんな苦心をして、やっとの思いで目的の赤瓦屋根の絶頂に匐い上りました私は、口に啣えて来ました手提の中から取り出した細引のマン中を屋根の中心に在る避雷針の根元に結び付けて、その端を自分の胴中に巻き付けて手繰りながら、急な赤煉瓦の勾配を降りて行きました。そうして屋根の端の雨樋の処から顔だけ出して、直ぐ下の廻転窓越しに、部屋の中を覗き込んで見たのでした。

温泉ホテルの三階は、全体が一つの眺望用のサロンみたいになっているのでした。雨模様で蒸暑かったせいでしたろう。窓の上側が全部、開放して在りましたので、内部の様子が隅から隅まで手に取るように一目で見えました。

私は、私の想像以上だったあの時の、あの部屋の中の有様を書く勇気を持ちません。ただ必要なだけ書いて置きます。

大きな棕梠竹や、芭蕉や、カンナの植木鉢と、いろいろな贅沢な恰好の長椅子をあしらった、金ピカずくめの部屋の中では、体格の立派な殿宮視学さんと、ゾッとするような白光りする背中の瘤を露出した川村書記さんと、禿頭の熊みたような毛むくじゃらの校長先生が、自動車で連れてお出でになった三人の若い婦人のほかに、土地の芸妓さんでしょう、年増の二人と、都合五人の浅ましい姿の婦人たちを相手に、有頂天の乱痴気騒ぎをやってお出でになりました。