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あきかぜとはは

尾崎士郎短篇集

尾崎 士郎

尾崎士郎『尾崎士郎短篇集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:秋風と母、運命について、河鹿、菎蒻、三等郵便局、十三夜、鶺鴒の巣、滝について、叛骨・中野正剛、蜜柑の皮。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,032 字 · 216 页

青空文庫

わたしはそのとき薄暗い室の中に嫂の引きつったような顔がうかんでいるのを見た。彼女は彼女の所持品の収められている箪笥の前に立っているのであった。

室の隅に父祖代々から伝わっている骨董品のしまってある大きい戸棚があった。執達吏の老人はその前に近づいて重い戸をあけた。中にはさまざまなものが幾つかの列に分たれて整然とならんでいた。すぐ眼の前にある壺にも香炉にもわたしの古いおもいでが忍んでいた。彼はそれにちょっとさわってみては順ぐりに手帳に控えながら番号のついた小さい紙を貼りつけていった。

嫂は最後まで箪笥の前を動かなかった。しかし、老人はちらっとその方を見ただけで廊下の方へ出ていった。兄の居間が一通り済むと老人は表二階から裏二階まで、用意してきた彼の懐中電灯で足元を照らし乍ら侵略するように歩き廻った。

すべてが終るまで三時間近くかかった。

「おそくなりましたな。――ことによると明日またお伺いするかも知れませんが」

彼はわたしの方を向いてこう言ったが、わたしの背ろに母の姿をみとめると慌てて近づいていって低いかすれるような声で彼女の耳に囁やいた。

「少しずつ目こぼしをつくって置きましたからな。