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あきかぜとはは

尾崎士郎短篇集

尾崎 士郎

尾崎士郎『尾崎士郎短篇集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:秋風と母、運命について、河鹿、菎蒻、三等郵便局、十三夜、鶺鴒の巣、滝について、叛骨・中野正剛、蜜柑の皮。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,032 字 · 216 页

青空文庫

軽い脳貧血を起したものと思われます。この男を抱きとめた瞬間、わたくしはぞくぞくっとうそさむい妙な気もちが背すじにつたわるのをおぼえました。今になってもあの青年の怨めしげな顔が眼先にちらついてくるようでございます。それからあとはわたくしも気もちがみだれてだれがだれだかよくおぼえていません。気がついてみるともうすっかり日がくれかかって、何時昼飯を喰べたかという記憶さえもないのです。何しろ午前七時に岸本柳亭からはじまったのが、知らぬまに午後五時頃になっていたのですから、一月十八日と言えば日のみじかい季節ではありますし、それに矢継早の刑の執行ですっかりつかれていたせいもありましょう――わたくしはこのときほどわが身をうらめしく思ったことはありません。それもはじめのうちは刑の執行をうける人たちの冥福を祈ってやりたいと思い、少しでも彼等を安心と落ちつきにみちびくことがこの世の一ばん尊い仕事であるとかんじていたわけなのですが、しかし時が経つにつれて、死んでゆく人間のうしろ姿を平気で見ていられる自分のこころがうすらさむくおそろしく、ときどき狂的な発作が全身の血管からこみあげてくるようなじっとしていられない感情がひやりと胸の底をかすめると、顔色一つ変えないで、いつも同じ調子でしゃべっている典獄が人間でなくて、石のように思わ