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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
尾崎士郎『尾崎士郎短篇集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:秋風と母、運命について、河鹿、菎蒻、三等郵便局、十三夜、鶺鴒の巣、滝について、叛骨・中野正剛、蜜柑の皮。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,032 字 · 216 页
わたくしはあの人たちがどうしてこんな運命に置かれたかということよりも何故人間にこんな運命があるのかということだけを考えました。むろんそのときの気もちをぶちまけて申しますれば、事理のよしあしを判断するひまなぞのあろう筈はございません。唯、今から考えますと、自分がよくあのとき脳貧血でもおこして倒れたり精神に変調を来してあらぬことを口走ったりしなかったものだとわれながら不思議に思われてならぬほどでございます。それどころか、わたくしは表面、教誨師としての態度においては、いささかもおのれを失うところはなかったように思います。もし典獄がわたくしを観察していたら彼もきっとわたくしを石だと思ったにちがいございません。だから、だれひとりとしてわたくしの冷静を疑うものがなかったのもあたり前のことでございましょう。外はもうすっかり日がおちておりましたが、じっとして蜜柑の皮をみつめていると無数の悲鳴が何処からともなく聞えてくるような気がいたしました。それはたぶんわたくし自身の悲鳴であったにちがいありません。ハッと気がついたときには典獄がわたくしの眼の前に立っていました。