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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
尾崎士郎『尾崎士郎短篇集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:秋風と母、運命について、河鹿、菎蒻、三等郵便局、十三夜、鶺鴒の巣、滝について、叛骨・中野正剛、蜜柑の皮。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,032 字 · 216 页
そこで、私は部屋を明るくするために電灯を点けた。しかし、鈍い光に照らし出された部屋の中は何かしら不快であった。相場師の印象がこの部屋の中のあらゆるものにこびりついてしまっているのだ。そういう感じを避けることができなかった。私は立ち上って窓をひらいた。外の空気の中へ不快な追憶を追いだすために。
だが、私の頭の上には曇った冬の空が掩いかかっていた。私の幻想を威圧するために、壁のように動かない灰色の雲の層があった。街路樹にかこまれた裏通りの傾斜面にはうすい街灯の光が流れて、異常な物寂しさが何か一つのおそろしい秘密を暗示しているようであった。街路樹の葉かげに見える二階家のバルコンには堅くとざした窓の青いカーテンのすき間から、かすかな光の線が落ちていたが、それすらも、今は凍りついたように無気味であった。
私は窓をしめ、それから部屋の感じを変えるためにカンプベッドをひきずって窓の下へ置き、そのあとへ、左手の壁とすれすれにテーブルを置いた。しかし、ニスの剥げたテーブルにも、鋲の落ちたカンプベッドにも人間の不幸な生活が沁みついていた。私の心は隣室の相場師が残していった不快な印象よりも、一層無気味な幻想の中に誘いこまれた。