轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

あきかぜとはは

尾崎士郎短篇集

尾崎 士郎

尾崎士郎『尾崎士郎短篇集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:秋風と母、運命について、河鹿、菎蒻、三等郵便局、十三夜、鶺鴒の巣、滝について、叛骨・中野正剛、蜜柑の皮。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,032 字 · 216 页

青空文庫

その微妙な変化を意識すると私は急に老衰した母の肢体が妙に不潔なもののように思われてきた。

そこへ妻と妹とが一足違いに帰ってきた。

「さあ少し代りましょう」

妻は浴衣の袂で汗をふきながら私の横へ坐った。私は蒲団のそばに丸めておいた母の汚物をふいた鼻紙をそっとかくすように持って立ちあがった。井戸端で手を洗いながら、自分の身体ににじみこんでいる母の体臭を感ずると私は着物をぬいで身体をふき、裸体のまま庭を歩き廻った。そこへ俥屋が走ってきたがやっぱりその医者も往診に出たあとだった。

三時少し過ぎになって近所の医者がやってきて注射をして帰っていった。注射が利いたのか母はそのままぐっすり寝入ってしまった。薄暗い室の中に仰向きに寝ている母の顔は肉がげっそり落ちて、その頬の生白さが薄い能面のような感じを与える。母は今年五十八だ。してみると彼女はこの十年の間におそろしく老衰してしまったものだ。この十年間私は彼女をお婆さんと呼び馴れているので母だという気がしない。だから私の頭の中にときどき閃くように通りすぎる母についての記憶は子供のころのことにかぎられてしまっている。中学を卒業してからの数年間を私は放浪してくらしてきたので母と会う機会がなかった。